陶芸家 小野象平の個展を開催いたします。
彼は今回の個展に寄せて、「原点回帰」という言葉を口にしました。
原点。
それは彼の陶芸の師からの教えに端を発します。
伝統技術やセオリーというある種、挑戦に対しての妥協点ともいえる言葉に屈し、 大衆の求めている受動のうつわを作ることに満足してはいけない。 そして、その先の見たことのない景色を生み出すことへ、 自分の身体が欲している表現に対しての欲求を偽らない、ということ。
彼が行う仕事は、土の本質を見抜き、それに対して自分自身を極限まで対峙をさせることによって、 土本来の特性「土味(つちあじ)」を、噴出させることである。 それは技術的な積み上げだけではなく、ごく思想的な自身の焼きものへの向き合い方だと彼は言います。
限界を超えて、土に圧を加え、焚き続けることによって土の中から噴き出す土味。 そして、金属と惑うような見たこともないメタリックな表情や、爆ぜるように噴出された鉄分の塊。 まさに、うつわの奇形や異形といわれるものを、この世に生み出していきたいという欲求にただただ、彼は向かっています。
うつわというカテゴライズを超越した何かに向けて作り続ける小野、 そして彼はそこに宿った魂をさらに超越して作り続けなければいけない。 彼のいう原点とは、振出しに戻ることではなく、常に、超えていこうとするその魂に触れ、 そして手を動かし、火を焚き続けることなのだと強く感じます。






