岐阜県多治見を拠点に制作を行う陶芸家、林志保の個展を開催します。
近年の林志保は、自然石の輪郭や表情をトレースすることによって、
曲線や陰影が内包する、繰り返される命の循環や痕跡を作品に写し取ってきました。
そこに現れる輪郭は、単なる形状の意ではなく、一つの存在が世界に触れる最小単位と捉えることができます。
それらは、これまで彼女の肉体を通して記されてきたカタチであり、作品を生み出してきた自身の生の実感と時間を手がかりに、林は今、あらためて新たな輪郭と存在を、その手のみで立ち上げて作品制作を行っています。
何か存在証明の一つの延長上の仕事のような、自身の生きる空間のすぐ傍にある循環の一部であることに気づくための行為であり、その行為そのものが、静かな包容の力を生み出しているように感じられます。
現代において、人やものの本質に触れることは、容易ではありません。
だからこそ、自然に寄り添うような言葉や行為が安易に歓迎されます。
そんな中、自然から人の手へと引き受けてものを作る決断には、勇気が求められます。
しかし、その選択によって作品はより血の通った意志を持ち、これまで曖昧だった存在の輪郭が、少しずつ立ち上がってくるのです。
林志保の作品に現れる輪郭は、この世界と静かに触れ続けるための、ひとつの手がかりのように存在します。
それぞれの時間や感覚に寄り添いながら、確かに「ここに在る」という実感を、そっと支えていくでしょう。




